序文
米食悲願
米の名前
古代米-1 赤米
古代米-2 黒米・香米
脚気と米の関係
脚気 その克服
飢餓の構造-消えた食糧
飢餓概観
天明飢饉の昔話
肉食考(ニクジキコウ)-1
肉食禁下にて
肉食開放へ
肉食は開化の味
精進料理とは
精進料理の心
いもの話
仏教と食
おせちの話
ヒエ、アワ
日本食雑感
忍者の携帯食
農稼録
..

日本食雑感

 人間の歯は一般に32本あるといいますが、そのうち歯を性質ごとに分けると臼歯、前歯、犬歯にという分け方ができます。この3種類の歯、実は面白い割合で生えております。

 臼のように物を磨り潰す役割をもつ「臼歯(キュウシ)」は穀物を食べるための歯といえますが、全体の60パーセントを占めています。次に前歯は噛み切るためのもの。野菜を食べるための歯と考えられますが、この前歯は全体の25パーセントです。そして最後に犬歯。言うまでもなくこれは肉を裂くための鋭い歯ですが、これが残る15パーセントとなります。

 実は面白いことに、歯の割合と人間が摂取すべき食べ物の理想的バランスは一致します。つまり肉類から見ると、大体、肉の倍は野菜を食べる。そして野菜の倍以上穀類を食べるのが良い食べ方ということになります。

 日本食は上の条件を綺麗に満たしているとも言います。我々の食生活は多様化とともに伝統の規範を破壊してきましたが、日本食は他国の食事と比べても実にバランス感覚に優れており、1970年代後半にアメリカ上院特別委員会の出した報告では日本人の食生活が理想的であるとされたほどでした。

 日本列島に住んだ我々の先人達は武人、僧侶を中心に医食同源を心がけました。そして、そのきめの細かい国民性からより食を洗練し続けました。時間をかけ熟成された日本食は繊細で美味しく身体にも良い、まさに日本人の英知の財産であると言えます。

 ところで現在の日本人には発想力が無いだとか言う批判があります。発想力が全く無いとは言えないと思いますが、一つ素材を与えられると、それをきめ細かく掘り下げる「職人気質的」な部分が日本人には強いと言えるでしょう。

 鎌倉期に作られた日本刀は世界最高の剣とも言われておりますし、1543年日本に伝来した鉄砲は新しい発想は生みませんでしたが、幕末の頃、日本産の鉄砲の精巧さは極致まで高められた逸品でした。

 その極致に高める過程で「〜道」という風に人間の生きる道にまで高めるのは我々の特徴でもあります。「剣道」「柔道」、更には現在では「ラーメン道」「野球道」という使われ方までもします。これは精巧さの上に、単なる技術である事に飽足らず生き方に対して、哲学的美学的な味付けをしたがる日本人の性質です。

 私個人は、こういう味付けは重苦しくてあまり好きではないのですが、しかし自分の職や生き方への自負であり、だからこそそれが自分を律するという倫理でもありえたものです。自分の職業、その極めて狭い本分を世界的な視点から捉えなおす行為は人が見苦しく生きないためにも、それぞれの職業をもつ人にもっと有っても良いのではないでしょうか。
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