序文
米食悲願
米の名前
古代米-1 赤米
古代米-2 黒米・香米
脚気と米の関係
脚気 その克服
飢餓の構造-消えた食糧
飢餓概観
天明飢饉の昔話
肉食考(ニクジキコウ)-1
肉食禁下にて
肉食開放へ
肉食は開化の味
精進料理とは
精進料理の心
いもの話
仏教と食
おせちの話
ヒエ、アワ
日本食雑感
忍者の携帯食
農稼録
.. 古代米-2

黒米・香米

 赤米の他に古代米と呼ばれるものには「紫黒米」や「香米」があります。

 紫黒米は赤米と似た特徴をもつ野生種。しかし赤米と違い、特殊な地位を確立しました。中国では紫黒米は栄養価が高いと言われ、漢方薬になったり、薬用として山地の妊婦が食べたりしたそうです。

 実際、栄養素を見てみると、ビタミンやカルシウム、リン、タンパク質を多く含み、薬用として「滋養強壮」「肝機能向上」「血液増量」「成長促進」「病気回復」「血色を良くする」などなど、たくさんの効用があげられております。また中国では黒色を邪気を払う色として好みますから、その点でも人気が高まったのかもしれません。

 この紫黒米は残念ながら現存しておらず、日本における実態は良く分かっておりません。

 一方、香米は中国、インド、ジャワ、東南アジアなどで人気があり、炊くと独特の香を発します。こう書くとタイ米を思い出す方もおられるのではないでしょうか。

 三国志で有名な曹操の息子である曹丕(186〜226在位)が臣に与えた書には「風上でこれを炊けば、5里は香がする」と記されています。この香米の栽培されていた土地は「十里香」と呼ばれたそうです。彼らは香米を好んだようで、低収であることから贅沢品として上流社会や文人墨客に食べられたそうです。

 「清朝の皇帝が召し上がった米はみんな匂いがした」という話も残っていますから、ちょっと普通の米とは違う格付けがされております。

 日本国内では大分県を中心とする九州で「香子(カバシコ)」と呼び、四国の高知県や和歌山県でもこの種を好んで食べていたようです。きっと太平洋側の海の航路を伝わって和歌山まで行ったのでしょう。

 人によっては香米を「煎り大豆のような」「ポップコーンのような」「枝豆のような」味とも表現しますが、こういわれると美味そうな気もしてきます。

 しかし日本全般で言うと評判は芳しくありませんでした。香米は「ジャコウ米」「匂い米」「ネズミ米」「有臭米」と呼ばれ、実にマイナスイメージな名前を持っております。

 香米は釜の中に数粒だけでも混ざっていても味が他の米に移ってしまうそうで、ある人は「ネズミの尿のような臭い」がすると表現しております。香米を好んで食べる人からすれば、「それを言ったら、納豆こそ足の匂いがするだろう」と反論がきそうです。

 少々汚い話ですみませんでした。兎も角、こういう風にとらえると食欲は一気に消え失せてしまいます。好みは人によりますが、最終的に日本人はこれを好みませんでした。

 第二次大戦の時、東南アジアに展開していた日本軍の兵士が当地で米を食べたところ、この香米の味に驚き、「古い米」なのかと思った人もいたという話が残っております。やがて香米は明治時代以降、赤米と同じ末路を辿りました。「白米が食べたい」という市場原理により、排除され滅亡してゆきます。
△上へ

農と食の歴史コラム トップへ戻る。

>>クサツパイオニアファーム では白米・玄米・分づき米を販売しています。