序文
米食悲願
米の名前
古代米-1 赤米
古代米-2 黒米・香米
脚気と米の関係
脚気 その克服
飢餓の構造-消えた食糧
飢餓概観
天明飢饉の昔話
肉食考(ニクジキコウ)-1
肉食禁下にて
肉食開放へ
肉食は開化の味
精進料理とは
精進料理の心
いもの話
仏教と食
おせちの話
ヒエ、アワ
日本食雑感
忍者の携帯食
農稼録
.. シリーズ 飢饉 1

飢饉の構造-消えた食糧


 1980年代後半、1年で穀物は120億人分生産されたと言います。当時の人口50億人を引くと70億人分の余剰が有る訳ですが飢餓は世界各地に転がっておりました。物も食えずに死んでいった人々が沢山いたのです。この70億人分の穀物は一体何処へ消えたというのでしょうか?昔からまるで変わらぬこの飢餓のシステムについて、数回に分けて話を進めたいと思います。

 過去の日本の飢饉において、都市民には餓死者があまり出なかったと言います。確かに都市部にも餓死者はおりましたが、それは農村部から都市に食い物を求めて現われたものが行き倒れするとか、またそもそもの貧困層において起きた餓死が多いのだそうです。

 更に農村部において20万人30万人という大量の餓死者を出した事実を見れば、都市と言うものは仮に農村部に飢餓を起こす事があろうとも生き残る物である事が分かります。

 これは現代の世界に置き換えても同じ。都市化した先進国には飽食現象が起き、一方で農業従事者率の高い発展途上国においては断続的な飢餓現象が起きております。驚く事に日本にある食料の3割が無駄に廃棄されているとも言います。都市民は農村から必要以上に物を集積し、必要以上に食べ、いらなければ捨てるという収奪活動を行っていることになるのです。

 こう書くと都市は悪く農村は被害者とも取れますが、一概にそうでもありません。そこには農村の同意もあると言う訳です。現代の飢餓のある国にも食料輸出国は決して珍しくないそうです。

 現代は商品経済が世界の隅々にまで流入しており、農村部の人々も自分が食べる為と言うよりも、金を得る為に食料を作っては売りつけようとします。つまり食料は商品であって、食べる為のものではないと言うことです。都市を正当化するつもりは有りませんが、つまり飽食と飢餓は同居しているという訳なのです。

 しかし都市にも飢餓が起きる事がありました。その場合多くは戦争によって引き起こされました。戦争は都市の強力な物資の収集能力や流通力、文化的な魅力と言った様々な要素に破綻をきたさせます。言うなれば強力な引力を持って形を維持していた星が引力を失い崩壊すると言う事です。

 20世紀、ヨーロッパに起きた飢饉はまさに戦争によるものでした。現在ヨーロッパはこの教訓から食料自給率を維持する様努力しております。食料自給率の低い現在の日本は戦争のない限り、飢餓は遠くの世界のように感じられますが、一旦戦争に巻き込まれた場合、その危険度は一気に加速し高まる危険性があります。

 最初の話に戻りましょう。実はあの消えた70億人分の穀物は肉になる家畜のエサの為等、必要以上を欲する先進国へ消えていきました。現在、食料と言うものは食べる為ではなく商品として売るために存在しています。だから美味しい野菜も形が悪いと言った程度で、少しでも商品価値が消えれば捨てられもします。

 江戸時代のように倹約令を発せよとは言いませんが、市場が世界レベルで広がっている現在、飢餓民に対しては確実に食料を送り届けられるシステムを世界レベルで考える必要があるのではないでしょうか。
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